●イグアナを馴らす

<小さい(幼体)イグアナを馴らす>

イグアナは小さい時ほど馴らしやすく、扱うのも簡単です。
それでもショップで手荒に扱われたり、店頭で人目にさらされたりして、人に対する警戒心や恐怖心を持っているので、うちへ連れてきてすぐに馴れるということはありません。
暴れることもなく、じっとおとなしく触られているイグアナは元気が無いだけで、ひょっとすると病気を隠し持っている可能性もあります。健康なイグアナは少しでも恐いと感じると、デューラップを広げたり、頭を上下にふったり(ボビング)、逃げたりします。

幼体のチビイグは人間の手が怖いんだよ!
絶対に上からつかんだりしないようにしよう。

上からつかまれるということは、自然界では鳥などに捕まって食べられてしまうことを意味しているので、上から来る大きな手はとっても恐いのです。イグアナを飼い始める時、ペットショップなどでは60cm水槽を勧められることが多いようですが、水槽の場合には餌やりやメンテナンスなどどうしても上からのアプローチになりますので、いつまでたってもイグアナを怖がらせてしまいます。半年も経てば60cm水槽では狭くなってしまいますから、できれば最初から温室飼育をお勧めします。温室の場合にはイグアナと同じ目線で横からのアプローチが可能ですから、ゆっくりそっと扱うようにしていれば何ヶ月後かには手乗りになってくれるでしょう。
手乗りになるまでに要する時間は、その個体がペットショップでどのように扱われていたか、言い換えれば人間に対してどれくらい恐怖感を抱いているかによって変わってきます。手荒に扱われていた場合には相当長い時間がかかると思ってください。でも、いつかは必ず人に馴れますので、諦めないで忍耐強く接してください。

イグアナはとっても頭がいい!
人間の気持ちがすぐに分かってしまうんだよ。

水槽を使用している場合には、餌を入れたり掃除をしたりする時にシッポではたかれたり、極端に怖い場合には噛みついたりします。そんな時にはこちらがパニックにならないことです。自分にもイグアナにも怖くないからね、と言い聞かせて兎に角、動作をゆっくりとします。飼い主の焦る気持ちはすぐにイグアナに伝わってしまって、イグアナを怖がらせてしまいます。餌を置く時、掃除をする時は短時間で済ませましょう。怖がっている時は一気に水槽の掃除をせず、少しずつきれいにするなど工夫してください。不衛生な状態は問題がありますが、あまり神経質に掃除をするよりもまずはイグアナにストレスを与えないことが大切です。
ケージが温室であれば、近づく時はゆっくりとした動作で、ケージの端の方からイグアナの高さでゆっくりと手を入れてイグアナに近づけるようにします。やさしく声をかけながら、好物の野菜の葉っぱなどをやってみてください。最初は恐がって近寄りませんが、気長にこれを毎日続けていると1〜3ヶ月先(どれくらいかかるかはその個体により違ってきます)には人の手は恐いものではないと分かってきます。

イグアナを手乗りにしよう。

手に持った葉っぱには興味津々のはずですが、なかなか手から食べてくれないでしょう。ところがある時、突然に食べるようになります。最初は葉っぱを引ったくるようにして奪っていき、温室の奥の方へ持っていって食べたりしていますが、そのうち手に持った葉っぱをその場で食べてくれるようになります。でも、まだ怖いので食べ終わるとさっさと温室の奥の安全だと感じられる場所へ避難してしまいます。そんな状態が続いていても、きっといつか逃げないでその場で食べるようになります。ここが第一関門ですから、決して焦らないでくださいね。手から初めて葉っぱを食べてくれた時の感動はいつまでも忘れられません。
手に持った葉っぱに近づいてきてその場で手から食べ始めたら、もう片方のあいている手でそっとイグアナをなでてあげましょう。最初はイグアナの手や腕のあたりを人差し指でそっと触ってみましょう。それが大丈夫そうなら肩のあたりをそっとなでてみましょう。それで逃げてしまうようであれば、まだ恐怖心が強いのでこの状態を辛抱強く続けます。食べている時に触られても平気になれば、葉っぱを持っていない方の手のひらを上にしてそっとイグアナのお腹の下へ潜り込ませてみましょう。最初はほんの少し、お腹を触るくらいから始めて、葉っぱを持っている手を自分の方へ引き寄せてみます。葉っぱにつられて寄ってくるようであれば、手乗りになるのはすぐですね。葉っぱにつられないイグアナの場合は、お腹の下に入れた手のひらを徐々に奥の方へ進めていきます。こんなことを忍耐強く毎日続けてください。
手乗りになるまでは毎日が辛抱の連続ですが、本当にある時、突然に手乗りになって人間に馴れるようになるのです。1週間、1ヶ月で馴れないからといって、決して焦らないでください。信頼関係ができるまで、ゆっくり待ってあげましょう。

イグアナが人に馴れるまでの時間は
イグアナと接する時間の長さにも比例するんだよ。

イグアナが人に馴れるまでの時間はイグアナと接する時間の長さにも比例します。時間の許す限り、観察したり話しかけたりして、イグアナに人の姿を見せて視覚的にも慣らすことも大切です。朝、餌を与えてその後は知らん顔というのではなかなか馴れないでしょう。お仕事がある方も、少し早起きしてイグアナに付き合ってあげてください。
イグアナも成長するにつれて段々と賢くなっていきます。生後1年にもなるとかなり人間のことが分かるようになっています。そうなればあと少しの頑張りです。
生後1年半から2年にもなる頃には、イグアナとお友達になれることでしょう。その頃になってもまだイグアナがパニックになったり怖がったりするようであれば、それまでの接し方を再度振り返ってみてください。イグアナの気持ちが分かるようになっていたでしょうか?イグアナが馴れないのはイグアナのせいだと思っていなかったでしょうか?お互いの気持ちが向き合った時、イグアナとの距離は縮まるのです。頑張りましょう!


人に馴れたイグアナのリラックスした表情。
なんだか笑っているように見えませんか?

日光浴中のフェリちゃん。
右の小さなケージはまだベビーだったピロロたん。

日光浴をするフェリちゃん。
凛々しいですね、女の子ですが。

これはあくびです。顎がはずれそう。
知らない人はびっくりかも。

<成長したおとなのイグアナを馴らす>

小さい時から飼われているイグアナでも、人にある程度馴れて人の手から葉っぱを食べるようになるにはそれなりの期間、たとえば4〜6ヶ月なりの時間がかかるものです。幼体期に餌だけを与えられて、あまり人に触られる機会もなく成長したり、いじめられたりした場合には、1歳以上に成長した後もなかなか警戒心が取れません。
ケージに近づいた時にデューラップを広げるようなら、それは“ちょっと恐いよ! あっちへ行って!”ということなのです。それだけならイグアナを抱き上げたりしても安全ですが、もっと攻撃的になる場合には要注意です。激しくボビングする、口を開けて威嚇する、シッポをくねらせる、顔面蒼白になっているという時には注意しなければなりません。イグアナが大きくなれば噛まれたりするケガの具合も深刻になってきます。でも、決して恐がらないようにしてください。
イグアナはとても頭のいい生き物です。側にいる人の目つきや声色や動作から、その人間が危害を加えようとしているか、自分のことを恐がっているかどうかを瞬時に判断します。そしてそれが有効だと判断するといつでも威嚇する癖がついてしまいます。イグアナも人に馴れていないのですが、こんな時は人間の方もイグアナに慣れていないのです。お互いに努力をする必要がありますね。冷静に自分を見てみてください。今、自分は威嚇しているイグアナが怖いと感じているかどうか。きっと怖いと感じていると思います。そんな人間がイグアナを触ろうとするのは感情を無視した強制力でしかないのです。愛情をもって触れることができるようになるまで、もう少し時間をかけて慣れるように努力しましょう。

人の目線よりも高い位置にいる時には
イグアナは自分が一番エライと思っているんだよ。

イグアナは人間の目線よりも高い所にいると、自分の方が強いと感じるようです。ボビングして脅かしても人間が立ち去らないと、飛びかかってきたりして噛みつくこともあります。馴れたイグアナでもその傾向が見られます。馴れていないイグアナでは、高いところにいればイヤな人間に触られることもなく安心していられるので、人が触ったり下ろしたりしようとすると激しく抵抗したり威嚇したりします。そんな状態では手がつけられませんから、十分に馴れるまでは目線よりも高い位置にイグアナが行けないように環境を作ってやることが必要です。

威嚇してくるイグアナはどうすればいいのかな?

ボビングや口を開けて威嚇した時にこちらが恐がってそのままにしたりすると、人間を遠ざけることができるということを学習して毎回それをやるようになってしまいます。威嚇してくるイグアナに正面から手を差し出したりしてアプローチすると噛まれてしまいますので、横から、あるいは上から手を噛まれないように注意して抱きかかえるようにします。本当に凶暴な場合には手を保護するためにバスタオルなどを使ってください。いらいらしているイグアナは何かに噛みつきたかったりしますので、そんな時は、バスタオルなどを差し出すとそれに噛みついてきます。そうしたらバスタオルごと抱っこしてしまいましょう。
顔を近づけないようにして、しっかりと体にくっつけて抱きかかえ、優しい声で話しかけながら、イグアナの興奮が治まるまで待ちます。その時に赤ん坊をあやすように左右にゆすってやると効果的だという体験談がありました。木の枝の上でそよぐ風に揺られていることを連想させるのでしょうか。
体の緊張が取れてリラックスするのが分かれば、放してやります。
でも、放した途端にまた威嚇してくるかもしれませんが、その場合にはまたしっかりと抱きしめて落ち着かせます。落ち着いたら自由にしてやります。決して途中で放さないようにしてください。暴れれば自由になれると間違って覚えてしまうと、いつまでもそれを繰り返すことになります。とても根気のいることですが、イグアナは頭がいいので、暴れなければ自由にしてもらえると理解するようになります。しかし、これもイグアナの性格にもよりますので、ほどほどの所で離してやってください。そして続きはまた時間をおいて、挑戦してみてください。
自由に遊ばせてやっている時やイグアナを捕まえる時には、イグアナの後ろを追いかけないように注意してください。せっかくうまく行きかけたのに、また恐がらせてしまうことになりますから。

イグアナとの信頼関係は焦らず、ゆっくり!

イグアナがいい子にしている時には、好物の野菜や果物をあげて、仲良くして信頼関係を築くようにしてください。
うちのフェリちゃんは自分の棚に人が近づくのがとても恐くて、ご飯を持っていっても、目つきがおかしくなって睨み付け、激しくボビボビして体を大きくして威嚇する癖がずっと抜けませんでした。ご飯だよ、って器を差し出した途端に飛びかかられて、ほっぺたを噛まれたこともありました。
そんなことが続くと、こちらの心の中にも“また飛びかかるのではないか、噛まれるのではないか”という恐怖心がちらちらと顔をのぞかせます。小さいうちは噛まれたって大したことはありませんが、体長40cm、全長150cmを越えるくらいになると、ちょっとしたケガでは済まなくなります。下手をすると30針も縫う大ケガになりかねません。
そんな時には飛びかかれないだけの距離を取って、なるべく近くに行き、ボビボビを止めるまでじっと立っています。
そんな時のイグアナはこちらのちょっとした動作も恐いので、やさしく話しかけるだけで余計な動作はせずにじっと立って我慢します。イグアナも人間もお互いに恐いのです。どちらも馴れる必要があります。
ボビボビを止めたら立ち去るようにして、(1)ボビボビをやっても人間を追い払うことはできない(2)人間が近くに来ても何も恐いことをされないということを分からせます。

ボビングされてもへっちゃらだい!

とにかくボビボビの嵐にじっと耐えてください。だんだんとボビングを止めるのが早くなってきます。
そして、こちらを睨み付けているイグアナの目をじっと見つめないこと。じっと見つめられると、何かされると警戒心を起こさせます。
こんな風にして、フェリちゃんの棚に頬杖をついてお話ができるようになるのにその後半年近くかかりました。フェリちゃんがもう2歳になる頃でした。
今ではママにべったり甘えることを覚えましたが、それでも棚に近寄ると時々恐くなる時があるようです。小さい時に感じた恐怖心はなかなか抜けないようです。小さくて無抵抗だからと生き物をいじめることは絶対にすべきではありません。いつまでもトラウマとなって残ってしまいます。

イグアナを人間サイドに近寄せるのではなく
人間がイグアナに近寄ろう!

“イグアナを馴らす”ということは、人間がイグアナに慣れるのだと考えた方がいいでしょう。
イグアナを長年飼っていらっしゃる方は、イグアナの気持ちが分かるようになっていますが、初めて飼われる方は触るのも初めてなのに、イグアナの習性や考えそうなことなど思い及ぶはずもなく、イグアナも人も心の底ではおっかなビックリなつき合い方になっているものです。そんな人間の気持ちをイグアナは敏感に感じ取って、さらに警戒心で身を固めてしまいます。
ですから、イグアナと接した経験が少ない方は、イグアナを人に近づけるのではなく、人間の方がイグアナに近づくのだと考えてください。嫌がるものを無理に人の生活ペースに慣れさせようとしても、逆に拒絶されてしまうことでしょう。
早く仲良くなりたいという気持ちは分かりますが、まずはそっとお互いのペースを守って接することが大切です。遠くからでも見つめ合っていれば、だんだんと慣れるに従ってその距離は縮まっていくでしょう。イグアナが自発的に人の側に寄ってくるようになった時の感激はいつまでも忘れられないでしょう。
そのようになって信頼関係ができれば、もう大丈夫です。
その時には人間の方も、なぜイグアナが恐がっているのかを理解してあげられるようになっていると思います。そうなれば無駄に恐がらせて噛みつかれるといった事故も、起こらなくなりますし、仮に噛まれたとしても予測できたことですから、ケガも軽くて済みますね。
イグアナを飼った限りは、10年以上のつき合いになるのですから、焦らずゆっくりと良い関係を作っていってください。